年に3回あるPro-D Day。
今回のテーマは「Difficult Conversations(やりづらい会話)」でした。
保護者や同僚との関係は大切にしたい。
でも、どうしても伝えなければならないことがある。
その“言いづらさ”の奥には、何があるのでしょうか。
私は今回の学びを通して、「人は皆、自分の居場所を守ろうとしている」という視点に改めて気づかされました。
善意でも、困ることはある ― Perceptionのズレ
例えば、こんなケースです。
クラスにとてもフレンドリーなお父さんがいます。
送迎の時間、子どもたちとよく遊び、時には自分の子どもだけでなく他の子も抱っこして持ち上げてくれます。
子どもたちは大喜び。
他の保護者から見ても「いいパパ」に映るかもしれません。
でも保育者の立場からすると、ヒヤッとします。
万が一落としてしまったら?
怪我をしたら責任は?
善意であっても、リスクは消えません。
やんわり「危ないので…」と伝えてみても、「大丈夫ですよ!」と笑顔で返される。
ここで起きているのは、価値観の対立ではなく、Perception(受け取り方)のズレです。
相手は「子どもにとって楽しい存在でありたい」。
私たちは「全員の安全を守る責任がある」。
どちらもポジティブな意図(Positive intention)なのです。
Empathy(共感)と境界線 ― 優しさは曖昧さではない
研修で学んだのは、まず「Prepare(準備する)」ことの大切さでした。
- 事実と感情を分ける
- 園のポリシーを再確認する
- 伝えたいゴールを明確にする
準備とは、相手を説得するためではなく、落ち着いて対話するための土台づくりです。
そして会話では「Empathetic Listening(共感的傾聴)」を実践します。
- Get totally present(完全に“今ここ”にいる)
目の前の相手に意識を向け、次に言う言葉を考えるのではなく、まず聴く。 - Become curious(好奇心を持つ)
「なぜそうするのだろう?」と相手の背景に関心を向ける。 - Seek to explore and learn(探求し、学ぶ姿勢で質問する)
決めつけずに問いかけ、相手の考えや価値観を知ろうとする。 - Welcome silence(沈黙を歓迎する)
すぐに埋めず、相手が考える時間を大切にする。 - Try on the other’s shoes(相手の靴を履いてみる=相手の立場に立つ)
例えば、こんな言葉から始めます。
「いつも子どもたちと関わってくださって、本当にありがたいです。」
これは関係づくりの基本である「5:1の法則(ポジティブな関わり5に対して、チャレンジングな話1)」にもつながります。
そのうえで、
「実は園の安全ポリシーとして、保護者の方がお子さん以外を抱き上げることは控えていただいているんです。」
と伝える。
ここで意識したいのが
**Golden Rule(自分がしてほしいように相手にする)**ではなく、
**Platinum Rule(相手がしてほしいように相手にする)**です。
自分が言いやすい形ではなく、相手が受け取りやすい形で伝える。
そして何より大切なのが「Presence(在り方)」。
- Calm and at ease(落ち着いて、安心した状態でいる)
- Attentive and of service(注意深く、相手のためにある姿勢)
- Open and transparent(オープンで誠実であること)
- Confident and optimistic(自信と前向きさを持つこと)
優しく伝えることと、曖昧にすることは違います。
研修で印象に残った言葉があります。
“Be wrong but hold your ground.”(自分が間違っている可能性を受け入れつつも、自分の立場は保つ)
相手の気持ちを理解することと、責任を手放すことは別なのです。
居場所を守りながら、関係を育てる
人は皆、自分の居場所を求めています。
今回のケースで言えば、あのお父さんにとって「子どもたちに好かれる存在であること」は、大切な役割だったのかもしれません。
だからこそ、ただ「やめてください」と言うのではなく、関わりの“形”を変える提案が必要でした。
ここで改めて心に残ったのが、今回の Key Takeaway(重要な学びのまとめ) です。
- Positive intention(相手の行動には前向きな意図があると捉えること)
- Perception(受け取り方・認識の違いに気づくこと)
- Preparation(対話のための準備をすること)
- Personalization(相手に合わせて伝え方を調整すること)
- Presence(その人の在り方・姿勢)
やりづらい会話は、関係を壊すものではありません。
むしろ、信頼を深める機会になります。
大切なのは、
Lead with empathy and compassion(共感と慈しみから始めること)。
そして、
Ready to listen, learn and grow(聴く準備をし、学び、共に成長する姿勢を持つこと)。
子どもも大人も、自分だけでも立てる力が必要です。
でも同時に、誰かとの関わりの中でこそ、自分の居場所を実感します。
あのお父さんとの会話も、「境界線を引くこと」と「関係を守ること」は両立できるのだと、私に教えてくれました。
今回のPro-D Dayは、知識を増やす日ではなく、人との関わり方の“質”を見つめ直す日だったのだと思います。
まとめ
やりづらい会話は、勇気がいります。
でもその奥には、いつも「守りたいもの」があります。
安全を守ること。
関係を守ること。
そして、相手の居場所を奪わないこと。
今回の学びは、「正しさで押し切る」のではなく、“共感しながら境界線を引く”という成熟した対話の姿勢でした。
**Difficult conversations(やりづらい会話)**は、対立ではなく、信頼を育てるプロセス。
子どもも大人も、自分だけでも立てる力を育てながら、それでも誰かと関わる中で居場所をつくっていく。
自立とつながりは、どちらか一方ではなく、両方あってこそ、安心できる居場所が生まれるのだと思います。
だからこそ私は、Ready to listen, learn and grow(聴く準備をし、学び、共に成長する姿勢)を大切にしながら、これからも子どもにも大人にも向き合っていきたいと思います。



