バンクーバーの交通は「慣れるまでが勝負」
カナダ・バンクーバーで暮らして20年になりますが、今でも思い出すのが「最初に公共交通を使った日の緊張感」です。現在のバンクーバーは SkyTrain が4つのラインで街全体をつなぎ、それ以外のエリアはバスが細かくカバーしています。
当時は2ラインでしたが、車がなくても生活できる便利さはありました。ただ、初めての頃はそれでも戸惑うことが本当にたくさんありました。
私が来たばかりの時は、バスの「降ります」サインは紐を引く仕組みでした。
どこが降り場なのか全くわからず、地図を持っていてもスマホがない時代。景色と地図を照らし合わせるのも難しく、結局いつもバスの運転手さんに「ここで降りたいです」と最初に伝えて、一番前に座って教えてもらうのが定番でした。
英語で伝わらなかったり、発音がうまく通じず違う場所で降りてしまったり…今思い出しても、あれは私の“バンクーバー初心者あるある”です。
車内に「次の停留所」が表示されるようになったのは、2010年のバンクーバーオリンピックの前後です。
観光客が一気に増えるタイミングで「さすがにこのままではまずい」と判断されたのだと思います。
振り返ると、みんな不便だと感じていたはずなのに長いあいだそのままだったのは、ある意味“バンクーバーらしさ”なのかもしれません。良くも悪くも「あるがまま」を受け入れる文化を感じますね。
電車のラインがもうひとつ増えたのもそのころで、それまでは空港からダウンタウンへ行くにはバスしかなかったのですが、空港線ができたことで移動が格段に便利になりました。車を使わない私のような人にとっては、とてもありがたい変化です。
バンクーバーの運賃システム:基本は“90分乗り放題”
バンクーバーの公共交通には 「90分ルール」 と呼ばれる便利なシステムがあります。
スカイトレイン・バス・シーバスのいずれも、1回分のチケット(Single Fare)を購入すると、そこから90分間は乗り継ぎ自由。バス→電車→バスのような移動も追加料金なしで可能です。ただし、これは同じゾーン内での利用が前提で、1ゾーンから2ゾーンへ移動する場合はその分の料金が加算されます。
バスは常にワンゾーン扱いなので、遠くまで乗る場合も安心です。
さらに、1日乗り放題の「DayPass」もあり、4時間半以上公共交通を利用する場合は確実にお得です。購入したその日の交通営業終了時間までであれば、バスやスカイトレイン、シーバスを何度でも利用できます。
ちなみに、昔は紙のチケットを買う方式で、駅には改札ゲートもありませんでした。
そのため、乗車中に偶に来るインスペクター以外はチェックされず、無賃乗車をする人も多く見かけました。インスペクターに遭遇すると、多くの人が罰金を払っていたようです。
その後、日本のSuicaのような Compass Card(コンパスカード) が導入され、駅にはゲートも設置されましたが、いまだにタップせず通り抜ける人をよく見かけます。駅員さんが常駐していないため可能なことではありますが、これもバンクーバーらしい交通文化の一つかもしれません。
バンクーバー生活で感じる交通文化の違い
長く住んでいてもいまだに慣れないのは、「降りる人を待たずに電車に乗り込もうとする人が多い」こと。
特に混んでいるとき、扉が開いた瞬間に無理やり乗ってこようとするので、降りようとする人とぶつかり、結果的に余計時間がかかってしまう場面も。
日本で育った私は「降りる人が先」という感覚が染みついているので、今でも戸惑います。これも文化の違いなのだと思っていますが、いつか改善されたらいいなと密かに願っています。
また、バンクーバーの物価上昇に合わせ、交通費も年々値上がりしています。
私が来た頃、1か月の1ゾーン定期は確か60ドル台でしたが、今は110ドルほど。
値上げの理由は「サービスの向上」や「新しい車両の導入」とされていますが、正直そこまで大きな改善があったようには感じません。
バスが普通にスキップされることもありますし、ラッシュアワーでも本数が特別増えた印象はありません。
それでも、日本と比べれば“絶対的な混雑”はかなり少なく、電車も2~3分おきに来るので、数本待てばたいてい乗ることができます。
不便もあるけれど、慣れると結構便利なバンクーバーの交通
初めてバスの紐を引くタイミングにドキドキしていた頃から20年。
今では、バスもスカイトレインも生活の一部になりました。待っていればすぐ電車が来る安心感もありますし、街の景色を見ながら移動する時間も好きです。
そして、90分乗り放題やDayPassなど、知ってしまえばとても使いやすい仕組みが整っているのもバンクーバーの魅力。
最初は不安だった交通機関も、当時と比べればかなり改善されているし、バスのスキップや乗車時のマナーなども今では「バンクーバーらしい文化のひとつだな」と感じています。
それでも、いつか更にそれらが改善される日を願いつつ、今日もまた電車を待っています。
