今週はクラスのオープニング担当。新しい週の始まりは、クラスの環境づくりをじっくり考え、形にできる大切な時間です。今回はクラスの中心に「家のキッチン」をイメージしたドラマティックプレイの空間を作りました。そこに置いたのは、今の子どもたちには少し不思議な存在かもしれない“黒電話”。その反応から見えてきた、子どもたちが「なぜそう行動するのか」、そして時代の変化について考えてみたいと思います。
オープニング週ならではのクラスセッティング
私の職場では、シフトが1週間ごとのローテーション制になっています。通常はオープニング、セカンド、サードと交代していくのですが、今月は産休から戻る先生がいる関係で、約1か月半サブの先生が入ることになりました。そのため、オープニングとクロージングはレギュラーの私たち3人が担当し、いつもとは少し違うリズムの週が始まっています。
オープニングの週は、クラスのセッティングを自分で比較的自由に考えられるのが魅力です。基本となるのは、ドラマティックプレイ(おままごと)、ブロックや積み木のビルディングエリア、センソリーテーブル、ブックコーナーなど。そこにアートや粘土、人形遊びなどを組み合わせ、子どもたちの興味や季節に合わせて調整していきます。
黒電話が生み出すドラマティックプレイ
今週はクラスの真ん中に、アーチ型の棚を使って「家」をイメージした空間を作り、キッチンを大きく展開しました。そこに置いたのが、以前Facebookのマーケットプレイスで購入したダイヤル式の黒電話です。今では家に固定電話がない家庭も多く、ダイヤル式となると、見たことも触ったこともない子どもがほとんどです。
受話器の持ち方はすぐに理解できるものの、ダイヤル部分は最初戸惑う子が多く、数字を押してみたり、じっと観察したりしていました。回し方を見せると、今度は興味津々。受話器を逆さに持ちながらも、「電話の家」で会話を楽しむ姿が見られました。
このやりとりを見ていて感じたのは、子どもたちは「正しい使い方」を知りたいのではなく、「どうなっているのか」を確かめたいのだということです。
知らない物に出会った時、まずは触れる・試す・真似る。その過程そのものが、子どもにとっての学びです。
コードを伸ばして遊ぶ姿や、受話器を持ち替えながら会話を続ける様子からは、物の仕組みを理解しようとする姿勢と同時に、「電話」という道具を自分なりに意味づけしていく力が感じられました。
ノスタルジーと便利さの間で考えること
私自身、子どもの頃は家にダイヤル式の電話があり、電話番号を暗記してかけていました。今では実家と自分の番号以外は、ほとんどスマートフォンのアドレス帳頼りです。公衆電話も街中で見かけることはほとんどなくなりました。
便利になった今の暮らしは素晴らしい一方で、黒電話を前にした子どもたちの姿を見ていると、「便利さ」と引き換えに、試行錯誤する機会は減っているのかもしれないと感じることがあります。
昔の道具は、使うために手や頭を使う必要がありました。うまくいかないから考える、試す、工夫する。
今回の黒電話遊びは、子どもたちが自然とそのプロセスに入っていく姿を見せてくれました。
40代半ばの私たちは、マニュアルな時代とテクノロジーが当たり前の時代、その両方を知っている世代です。だからこそ、子どもたちが今どんな環境で育ち、どんな関わり方をしているのかを、少し立ち止まって見つめ直すことができるのかもしれません。
まとめ
オープニング週のクラスセッティングは、環境が子どもの遊びや行動にどのような影響を与えるのかを改めて考える機会になります。
黒電話という一つの道具から生まれた子どもたちの姿は、「知らないものに出会った時、人はどう行動するのか」をとても分かりやすく教えてくれました。
子どもたちは常に、意味のある行動をしています。それは時に遠回りに見えたり、大人の想定とは違った形で表れたりしますが、その背景には必ず理由があります。
日々の保育や人との関わりの中で、目の前の行動だけで判断するのではなく、「なぜそうしたのか」に目を向けること。その視点を、これからも大切にしていきたいと思います。



